病院の待合室は、いつもながら混雑している。
父がひとり座るのでいっぱいいっぱい。
なんだけど、父としてはどーしても、
ひとりだけ座るのは納得いかない。
寒い中、娘をひとり立たせるのは忍びない。
というわけで、
しきりに、手招きして、指し示す。お前座れ、あそこ空いた。
「いや、ほかに足の悪いひともいっぱい、いるから」「だいじょうぶだから」と言っても聞きゃーしない。
「んじゃ、後ろ座るね」と後方のパイプ椅子に浅く腰掛けてみるけど、針のムシロ。
ほかに座らないと大変なひと、いっぱいいるからさー。
「週刊新潮」とか「オレンジページ」とかいろいろ、ちょいと場所を離れて立ち読みでいいから見たいのがいっぱいあるけど、諦めざるを得ない。なんせ、3分おきに所在確認の信号が送られる。
にっこり笑って手を振る。
娘が元気でにこにこしてないと、不安なんである。
心配そうにきょろきょろする。全力でにこにこ手を振る。
待合室の混雑が一段落して、隣が空くまで、やり続ける。
それくらい、お安い御用だ。