昨日、まめむし云々の少し前、父はずいぶん眠そうだった。
眠さとか疲れとかだるさとか全力でがんばって「お茶飲みたい」と父が言うと、すぐさま、施設のフロアリーダーが飛んでいってくれた。父が最近とても飲みたがる、冷たい氷水。ストローまでつけて。
すると父が言う。「ひとつだけ?」。
?????
わたしには分かる。
「今みんな一生懸命しゃべらなくちゃいけなくて、お茶飲めないから、だから、ちょっとだけ、先に飲んでてもらっていい?ごめんね」。
「じゃあ、悪いねえ」と言って、飲む。わたしには分かる。自分のために集まってくれた人たちより先に失礼して、お茶飲んじゃいました。お客さまには先にお茶を出さなくてはいけません。申し訳ない。
「(自分)ひとつだけ? (後はいいの?)」と、当たり前に言う。
自分の喉が渇いたことと、周囲の人の喉が渇いたこととを等価に考えられるかどうか、たぶんそれは人間の質だ。父の娘だから、わたしには分かる。