とにかく輪ゴムが嫌い。いつの間にか床に転がって埃まみれになってるし、溶けてくっついてたりするし、肝心なときにぱんと切れて使いものにならないし。においも感触も形状もなにもかも嫌い。なのでわたしはクリップを使う。
という人に今まで会ったことがなく(だいたい輪ゴム好きですかときいて回ったりしない)、別段会いたいと思ったこともないけど、母のところに来てくれる美容師さんが、実は同じらしい。電話すると、家まで道具一式持って来てくれる美容師さん。しかもうまい。「ぬるぬるとやる気なく頭洗ってなんなんだろう。しかも次行くと絶対いないのよ。新入りが入っては辞めてる」とぶちぶち文句言いながら通ってた前の美容室とは大違い。
その美容師さんにお茶菓子をおみやげに渡すとき、クリップに気付いたそうである。「自分も輪ゴム嫌いで! 家族にクリップ渡してるんです。最近だいぶ浸透してきて」と大いに喜んでいた、と母が話す。そういう母は輪ゴム好き。さらに一度使った輪ゴムは二度と使わない、という謎のポリシーを持っている。