母が点滴を入れ替えてもらってる処置室から、
「あれ? むっちゃんは? むっちゃん、見た?」
「そういえば、朝、CTのときいなかったような」
「この前、落っこってたからねー」
と言いながら看護師さんと放射線技師さんが出てきた。
よもや。
病室のテレビ台の上から「むっちゃん」をつかんで持って行くと、
「あ」「あ、いた」
身長約28センチ。
小学1年のとき、「ほしい、よぉ!」を繰り返して買ってもらった、「モンチッチ」とほぼ同じ顔の、赤んぼうの人形である。
枕元には常に日替わりでぬいぐるみを侍らせているけど、「むっちゃん」が格別なつかしいらしく、ここ1週間ほど手放さない。
「みんなに人気なの、むっちゃん」と本人が言ってたけど、なんとまあ。
そこまで気遣っていただいて、ほんとうにありがとうございます、お手数かけますと何度も頭を下げると、いーえ、と朗らかな様子で母のところに持って行ってくれた。